金属水素 2012 1 22

書名 低温「ふしぎ現象」小事典
     0度〜絶対零度で何が起こるか?
著者 低温工学・超電導学会 編集  講談社ブルーバックス

 この本は、「事典」ですので、
最初の1ページから読む必要はなく、
目次を見て、興味を引いたページを読むという読書法でよいと思います。
 まず、注意しなければならないのは、
この本では、いつも日本人が使う温度と違う表示方法が使われているということです。
摂氏0度は、絶対温度で273K(ケルビン)です。
 最近、日本の関東地方では、雪が降って寒い日が続いていますが、
だいたい、気温は、273K〜283Kのあたりを推移しています。
 この本では、273KからゼロKの温度をテーマとしていますので、
「低温」というよりは、「極低温」と言った方がよいでしょう。
 私は、書評を書く関係で、全部、通読しましたが、
興味を引いたページは、以下のとおりです。
「24 超ヘビー級の低温液体でダークマターを捉える」
「26 超電導現象 現る」
「28 木星の内部は超電導状態? 手がかりは金属水素」
「30 液体酸素は磁石が好き?」
「34 電球を明るく輝かせる液体窒素」
「37 夢のエネルギー 水素燃料が抱える難題」
「39 そして永久気体も液体になった」
「49 磁石を使って冷却する 絶対零度の高い壁」
「50 原子の振動を抑え込むレーザー冷却」
「54 人工衛星は、なぜ冷やさなければならないのか?」
 さて、ここまで書くと、多くの読者は、
「なんで、そんなに低温にしなければならないのか」と疑問を持つでしょう。
 それを説明すると、書評が長くなりますので、省略しますが、
日本の場合は、産業用に、低温技術が大いに利用されていますと書いておきます。
 科学的な興味においては、低温になればなるほど、
不思議な現象が現れてくるということです。
それが科学的な興味に終わることなく、
産業用に利用できないか、日夜、研究が続けられています。
 ところで、そもそも温度とは何か、不思議に思ったことはないでしょうか。
温度とは、大雑把に言えば、分子の振動があること、
いや原子の振動が、あるいは原子核の振動があることでしょうか。
 その振動を少なくしていく。
つまり低温にすることによって。
絶対零度にすれば、振動もゼロになるかといえば、
量子力学により、ゼロにはならないということです(不確定性原理)。
 次に、多くの人が不思議に思うことは、「液化」でしょうか。
液体というと、水を連想しますが、それ以外の液体があるということです。
水は、寒くなれば氷(固体)、室温で液体、
さらに温度が高くなれば、水蒸気(気体)になります。
 この理屈ならば、気体である水素も窒素もヘリウムも、液化できるはずです。
水素を液体にして、さらに固体にするという話は、想像を絶する話でしょう。
しかし、興味深い話でもあります。
それは、「木星の内部は超電導状態? 手がかりは金属水素」というページにあります。
(以下、引用)
 水素は、常温・常圧では気体ですが、
20Kで液体となり、14K以下で固体となります。
水素は、気体、液体、固体の、どの状態にあっても、
通常は電気を通さない絶縁体です。
 ところが、1930年代に、
「きわめて高い圧力のもとでは、
水素分子が解離して導電性の金属になる」と予言され、
1960年代には「固体の金属水素は室温超電導の可能性がある」と論じられました。
 1998年には、アメリカの研究所で、(中略)、
超高速物体を打ち込む方法で、液体水素を圧縮したところ、
高圧・高温状態で、電気抵抗の急激な減少が観測されています。
 この結果が、金属水素が作られた証拠を示すものなのかどうかについては、
現在のところ、確認はされていません。
 固体の金属水素を作るという最終的な目的は、まだ達成されていませんが、
常温・常圧で金属水素ができれば、
場所をとらない強力なエネルギー源として、
あるいは軽量の構造材料として普及する可能性などが考えられます。
超電導物質としてだけに留まらない大きな発展につながることが期待されているのです。
 さて、堅苦しい話が続きましたので、
おもしろい話を書きましょう。
「物体が、UFOのように空中に浮かぶ」という話です。
 これは、マイスナー効果によって、
永久磁石の上に置かれた超電導体が浮上するという話です。
 マイスナー効果とは、この本から引用すると、
超電導体に磁場を加えても、
外部磁場の内部への侵入を完全に排除して、内部磁場をゼロにする現象です。
 超電導体の内部の磁場がゼロであるということは、
超電導体自身が外からの磁場を打ち消すように、
逆向きに磁化することを意味しています。
(中略)
 超電導体では、この反磁性が非常に大きく、
内部での磁場を完全にゼロにしてしまいます。
これが、「完全反磁性」で、マイスナー効果の本質です。
(以上、引用)
 これで、低温技術と超電導技術に興味がわいたでしょうか。
最初は、興味本位でよいと思います。
大河といえども、最初は小川、いや湧き水から始まります。
 若者よ、
興味本位で学び始めた科学が、やがて大河となることを期待しています。

































































































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